糖尿病とは
食事で摂取した糖質は分解されてブドウ糖となり、生体のエネルギー源となります。ブドウ糖は血液によって体中の細胞に運ばれ、膵臓から分泌されるインスリンの力を借りて筋肉や各臓器で利用・貯蔵されます。脳にとっては唯一のエネルギー源です。
糖尿病は、エネルギー代謝のシステムの中でインスリンが不足したり十分な働きをしなくなったりすることで、血液中のブドウ糖量(血糖値)をコントロールできなくなる病気です。
糖尿病には1型と2型がありますが、ここでは生活習慣病である2型を中心に解説します。
糖尿病の症状
糖尿病の初期にはほとんど自覚症状はなく、その後ゆっくりと症状があらわれてきます。血糖値が上がると腎臓が尿として排出しようとしますので、トイレの回数が増えます。その結果、体内の水分が不足するために様々な症状が現れます。
- おしっこが近い
- のどが渇く
- 皮膚が乾燥しやすくなる
- 手足にチクチクした刺激を感じる
- やたらにお腹がすく、体重が落ちる(カロリーが失われるため)
- 疲れやすい
- 手足の感覚が低下する
- 感染症にかかりやすくなる
- 切り傷などが治りにくい
- 目がかすむ
など、様々な症状があらわれます。進行した場合、男性ではEDの症状があらわれることもあります。
自覚症状が乏しくても、健康診断で血糖値が高いと指摘された時点で早めの受診をして、治療と生活改善を開始することが、糖尿病を悪化させないために重要です。
糖尿病にかかりやすい人
糖尿病の原因は生活習慣です。次のような項目に当てはまるかどうか、チェック項目を確認してみてください。
- 肥満
- 偏食(とくに野菜不足や海藻不足)
- 過食、過飲
- 甘いものや脂っこいものが好き
- 栄養ドリンクやスポーツドリンクなどをしょっちゅう飲んでいる
- 朝食抜きが多い
- 生活が不規則で食事時間もばらばら
- すわりっぱなしが多く、外歩きや運動などが不足している
- 40歳以上
- 家族や親せきに糖尿病の人がいる
- 妊娠中に血糖値が高いことを指摘された
チェックが多い方は要注意です。医師の指導のもと、運動や食生活など、生活習慣の見直しを始めましょう。
糖尿病の危険性
糖尿病の本当の怖さは、放置して悪化させてしまったときの合併症です。
動脈硬化
血管に負担がかかることで脳出血、脳梗塞や心臓疾患のリスクが高まります。
糖尿病腎症
腎臓の毛細血管の働きが劣化し、排尿に障害が出ます。進行すると人工透析が必要になります。
糖尿病網膜症
網膜の血管が侵され、最悪の場合失明に至ります。また白内障をおこす患者さんも多いといわれています。
糖尿病神経障害
手足がしびれる、感覚がなくなるなど近く異常が見られます。ケガに気づかず、潰瘍・壊疽に至ってしまうこともあります。
糖尿病の治療
まずは食事療法と運動療法、生活習慣の改善が基本です。それでも血糖値が下がらない場合には、薬物療法をプラスします。
食事療法
「食べすぎ」「飲みすぎ」「偏りすぎ」を避けて、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの必要な栄養をバランスよく摂ることが大切です。主治医と相談して1日に必要なエネルギー量を設定し、必ずそれを守りましょう。
また、栄養ドリンクやスポーツドリンクはかなり糖分が含まれていますので、注意が必要です。
運動療法
無理をしない範囲で、継続できる運動を行うことが大切です。
当クリニックでは、必要な運動量、運動方法の指導なども行っています。
薬物療法
食事療法や運動療法だけで効果があらわれない場合は、血糖値をコントロールする薬を処方します。ただし、食事療法、運動療法は続ける必要があります。とくに薬は食事療法を前提に量を処方します。食事療法が守られないと薬の効き目が安定せず、血糖値にも悪影響が出ます。
糖尿病の予防
必要以上のカロリーを摂らないで膵臓の負担を減らすことが糖尿病予防の第一です。「食べすぎ」「飲みすぎ」「偏りすぎ」は禁物です。とくに糖に変わる炭水化物やアルコール類の摂りすぎには注意しましょう。
また、腎臓の異常、糖尿病の予兆は症状にあらわれにくいので、定期的に血液検査や尿検査などを受けるようにすることが大切です。